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最後の回転木馬

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V6

門の鍵がかかる音 係員が「お疲れさま」と帰っていく 明日には取り外される看板を 僕だけがまだ見ていた ポケットには二枚の半券 捨てる理由を失くしたまま 十年前の日付だけが 少し薄くなっている 君はあの日 馬じゃなく馬車を選んだ 「ヒールだから仕方ないでしょ」って 笑って僕を隣に座らせた 覚えてるよ そんなことばかり 回れ 回れ 最後の回転木馬 誰もいない遊園地で 一、二、三 一、二、三 君が笑う 僕も笑う あの日と同じところで 景色だけが歳をとった 売店のシャッター 色褪せた観覧車 君が落としたアイスで 二人して笑ったベンチ 僕らがいなくても ちゃんとここに残っていた それが嬉しくて 少しだけ残酷だった ねえ あの頃の僕らに会えたなら 何を教えてあげよう 「大切にしろ」なんて きっと言わない そんなこと知らないから あんなに笑えたんだ 回れ 回れ 最後の回転木馬 もう一周だけ付き合ってよ 一、二、三 一、二、三 手を取って ステップを踏んで 君は昔と同じ癖で 三歩目だけ少し遅れる ほら やっぱり君だ …… 音楽が止まった 目の前には 誰もいなかった 僕の右手だけが 誰かの手を握る形のまま 宙に残っていた そっか 僕ひとりだったんだ それでも もう一度だけ頭を下げる お相手していただけますか 一、二、三 一、二、三 今度はひとりで踊れるよ 君が教えてくれたから 回れ 回れ 最後の回転木馬 思い出まで壊さないで 明日ここがなくなっても 僕らまで消えるわけじゃない 一、二、三 一、二、三 ありがとう 最後の一周が終わる 出口へ歩き出してから 一度だけ振り返った 止まったはずの木馬が ほんの少しだけ 揺れていた