窓の縁で 湯気がほどける 薄い硝子が 夜をたたむ 雨は名を 残さないで 街の輪郭を そっと消す 白いページに 指の熱 遠いサイレンが 水に溶ける 部屋は静かに 水槽になる 思い出は 濡れた紙のよう 抱けば破れて 置けば乾く 静かな体温を 窓に置く 雨粒が 窓を打つたび 忘れた声が 少し戻る 言葉じゃなくて 私をほどく音 そのままの部屋で 朝が来る グラスの水面 揺れて止まる カーテン越しの 色のない空 鳴らない電話に 雨が映る 言葉が傘なら 私はささない 濡れた自分を 責めずに歩く 雨粒が 窓を打つたび 記憶の角が 丸くなる 窓は閉めないで もう少しだけ 標本のような 今日が終わる