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薔薇の余白

鍵は鳴らさず 朝を測り 名のない風が 廊下を数える 薔薇は語らず 影を置き 意味だけが 壁に残る 呼べば返る声を 答えと信じておりました けれど沈黙は 水面のように 映すものを 選びますの 秩序とは 檻か それとも 器か 満たすかどうかは 注ぐ手次第 わたくしは 名を置きません 勝ちの形も 印も残さず 薔薇は余白を 開いたまま 読むかどうかを 委ねますの 翡翠の杯に 映る空は いつも少し 歪んで見える 正しさとは 光の角度 近づけば 影が増えるだけ 違う拍子で 足音が重なり 未来は 和音にならずに進む 答えとは 扉ではなく 手触りのない 取っ手 引くかどうかは あなたの癖 わたくしは 鍵を伏せます 開けもせず 閉じもせず 薔薇は香りで 問いを置き 選ぶ理由を 照らすだけ 迷いは 欠陥ではなく 思考が 息をする音 わたくしも かつて 同じ場所(ぶたい)で 立ち止まりました 未来は 白紙の楽譜 指揮者も 決まっていない 薔薇は血ではなく 余熱を残し 名を持たぬ風を 送り出す 微笑みは 比喩のまま わたくしは 一歩 行間(うしろ)へ 光が 息をしていますわ