
薄闇の末、ひそやかに揺れる螢の灯 影の川辺に流れふたつ、 うつろな声が夜を撫でる。 己の硝子を裂く手毬唄 娑婆に浮かぶは鵺と白澤 ひとつ唇を啄むたび 溺れ惑う約束、爪痕残し挿む うつせみの皮 何度脱いでも 愛は瘡蓋、心の奥に 「離すまじ」と二つの魂が 夜の泥濘で闇と交わる 寂寥の甘き罠、 白息に滲む祈りを結べば、 重く鎖を絡めたり 消えぬ名残、血潮に沁みて。 鵺と白澤、仄暗き逢瀬、 傷を舐め合い数え 抜け殻に溺れる 束縛こそが蜜―― 痛みと悦楽の倣い、 誰より深く縛り合う ひとたび螢火 消ゆるなら その屍に息を吹き込むは あやかしの愛 枯野に咲いた毒の蘭 白澤の涙、鵺の咆哮 声なき絶叫が月を呑む ひとしずくに満たぬ渇き 愛しき隷属、白刃の誓い 求め合う温もりは、 羨望と渇望で黒ずんで 躯を重ねても 満たされぬ虚ろさ けれども手放せず 心臓に爪を立てる 絡み合った快楽、溺れる幻 沈む先は 痛みと共鳴する底 呪詛と赦しの琴線、 絶え間なく振り分ける 鵺と白澤、深淵の鍵、 傷跡を交わし契る 抜け道のない憎愛 欲望と絶望に身を呑まれて 「君だけを檻に」 「私だけが檻」 溶け出す境界線 あの日の螢火、 ふたり囚われた夏の匂い ほのかに谺す笛の余韻 底なしの闇に、渦巻く鼓動 光なき川面を撫で あやかしの影、ただ揺らめく 泡沫に消える誓い でもまた、夜は巡る あやかしよ、沈みゆけ 愛の名の下で 血潮に記すは契りの模様 鱗粉まみれの頬、牙でえぐり合う 螢火の痕、黒ぐろと肌に滲む 響き合う喘ぎ、夜の蛇行 絡み合い、溶け合い、 赤黒き泥水となりて深く沈む 魂の奥底、快楽と呪縛 二度とは還らぬ翳りへ…

