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あと一歩だった

いち、に、さん 数えて渡れ 白いうさぎは まだ笑ってる 潮の匂いを蹴り上げて 見えない岸を睨んでた この島より向こう側 どうしても触れてみたかった 並べ並べ海の底まで 賢いふりで舌を出す 背中の数を踏みながら 白い足だけ軽かった あと少し あと少し うまくいくはずだった あと一歩だった 笑ったせいで壊れた 波打つ声が牙になる 白い毛並みを裂いていく あと一歩だった 渡れるはずだった 痛みだけ置き去りにして 風の岬で泣いていた 塩を塗り込む影達は 笑いながら通り過ぎる 「高い山で眠ればいい」 優しい顔で傷を刺す 乾く裂ける風が噛みつく 声にならない夜だった 赤く滲んだ身体ごと 海に捨てられたみたいだ あと少し あと少し 誰か気づいて欲しかった あと一歩だった 白いままでいたかった 痛みを知らない言葉だけ この身体を裂いていく あと一歩だった 戻れるはずだった 泣き声さえ擦り切れて 月の下で伏せていた [Shamisen Solo] 荷を背負った足音は 何も笑わずしゃがみ込む 「がまの花で眠ればいい」 静かにそう言った 触れない手の温度だけ 痛みの奥へ届いてく 砕けた息を包むように 白い光が戻っていく あと一歩だった けれど終わりじゃなかった 温かいその手の中で 白い毛並みを風が撫でる あと一歩だった だから出会えたんだ 優しさだけが触れられる 傷がこの世にあることを いち、に、さん 数えて渡れ 白いうさぎは もう笑わない