夏空へ 糸を投げた 胸のほうが 先に弾いた 水面より 騒がしいのは きみの横顔 見た瞬間 帽子のつばで 目を隠す ばれてるかな? この微かな熱 「ふつうだよ」って 笑うたびに ふつうじゃない 息になる 浮きが ちょん、ちょんと跳ねて 胸が とん、とんと返す 落ち着け、わたし 声が揺れる きみに 気づかれそう 恋、こい、恋釣る乙女 言えない「好き」を 糸に結んで 笑ってごまかし すぐ赤くなる 釣りたいのは 魚じゃなくて きみの視線 ペットボトルが からんと鳴る ちいさな音が 今のわたしで 冗談ひとつ 軽く投げてみると 沈む時間が 少し怖い 水面の光 追いかけて 肘がふれて 息が止まる 笑えば戻る 浅い呼吸で 言葉だけが 泳ぎ続ける 恋、こい、恋釣る乙女 ハートの浮きが 先に弾いた 言えない分だけ 近づきたくて 笑い声だけ そっと投げる 駆け引きなんて 知らないまま 強がりを脱いで 並べたなら 糸が指に 食いこんだその痛みが 逆に わたしを 押してくれる (……) いま、言う ーー蝉時雨が ふっ と止む。 水面だけが まるく揺れた 返事を待つ手 震えても もう 巻き戻さない 恋、こい、恋釣る乙女 青い空まで 糸が伸びた 言えた「好き」が 波紋を描いて はじける想いが もう止まらない 竿を置いて 並んで座る 糸はもう いらないね きみが笑う わたしも笑う ーー次は、きみが釣る番だよ。