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幽冥の境界を越える鍵盤の共鳴

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V5.5

十九の夏に私は病室で身罷り 魂魄だけが貴方の部屋に還る 貴方は寝台の端で頭を抱え込み 生きる意味を失くして咽び泣いている その震える肩を私は抱き締める されど腕は虚しく虚空をすり抜ける 貴方が灯したベランダの迎え火は ただ雨の匂いに混ざり爆ぜるだけ 私はずっと貴方の傍にいたのに 涙を流す貴方の横で泣いていた ただ悲しいかな私の透明な肢体は 貴方の優しい瞳に映らないだけ 声も肉体も奪われた私には ひとつだけ残された奇跡があった 指先にすべての祈りを集めては 電子ピアノの鍵盤を押し下げる トントンと夜の静寂に撥ねる音 あれは二人で何度も聴いた旋律 貴方はヘッドホンを外し振り返る そこに宿るノイズを遂に見つけて まだだめだよ貴方はここで生きて 言葉にならぬ叫びが和音(コード)になる 貴方の震える指がその隣を叩き 私たちは音のなかで重なり合う 朝の光がデジタルの塵を染めて 私は静かに画面の奥へ消える 貴方は新しい鼓動(ビート)を刻み始める もう見えなくても私は隣にいるよ