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ヒツギウタノハナヨメ

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V5.5

鐘が三度 鳴ったなら あなたが迎えに 来るのでしょう 白い棺の 奥深く 花嫁はまだ 歌っている 古い屋敷の 地下へ続く 黒い階段 湿った石 祖父の残した 古い日記 震える文字が 夜を滲ませる 歌が聞こえる あの歌が来る 鐘を鳴らすな 地下へ行くな 死の間際に 怯えた声で 祖父は誰かの 名を呼んでいた 百年前の 婚礼の夜 白百合の香りが 礼拝堂に満ちた 古いしきたりと 花婿は笑う 目を閉じて 歌っていて 鐘が三度 鳴ったなら 迎えに行くと 嘘を置いた 白いヴェールが 闇に沈んで 棺の蓋が 静かに閉じた ヒツギウタノハナヨメ 今も地下で歌う 終わらない婚礼を 白い闇に抱いて 来ない足音を 夢に聞きながら 百年分の祈りが 黒く花ひらく 黒く錆びた 古い指輪 日記の奥で 眠っていた 屋敷を奪い 名を継いだ男 それが僕の 血の始まり 地下へ降りれば 歌が近づく 花嫁の声が 石を伝う あなたでしょうと 優しく笑う 棺の内で 夢を見るように 僕はあなたの 花婿じゃない けれど逃げた男の 血を引いている 言葉にしたら 歌が揺らいだ 白いヴェールの奥 瞳が開く 遅かったのね でも来てくれた その微笑みが 胸を裂いた 違うと告げても 鐘は沈黙 百年の夜が 息をしていた ヒツギウタノハナヨメ 僕を呼ばないで その名は僕じゃない けれど血だけが応える 閉じた約束を ほどくために来た 百年遅れの鐘を この手で鳴らす ひとつめの鐘 嘘がほどける ふたつめの鐘 歌がほどける みっつめの鐘 夜がほどける もう待たないで もう泣かないで ひとつめの鐘 指輪が落ちる ふたつめの鐘 黒薔薇が散る みっつめの鐘 まぶたが閉じる もう待たないで もう歌わないで ヒツギウタノハナヨメ もう歌わないで 嘘に閉じた婚礼は 鐘の音にほどけた 白いヴェールだけが 朝を待つように 棺の中で静かに 眠りへ帰る 鐘が三度 鳴ったあと 地下に歌は もうなかった 白い棺の 奥深く 花嫁はやっと 光の中へ