
ロキたち邪神どもは 味方がいくら死のうが一向に構わぬ 黄泉軍は恐怖によって支配されている だが劣勢の自軍を眺めて ロキは苛立ち大地震を起こした 極東の地には毒液を受け止める妻はいない そのとき、暗い空に虹色に輝く光が差し込んだ 突如、叢雲を割って五色の大鴉が雷鳴のごとく現れた 背に四柱の絢爛たる神々を乗せて 大鴉はしばらく旋回して 島の南方の浜に降り立った そこは古の戦で血塗られた土地だ 神々は大鴉の背から降り 西方から来た邪神どもを大声で呼ばわった それに応じた邪神どもは 神々を四方から包囲した 炎の剣持つスルトが池之浦を薙ぎ払った 燃え盛る野原の奥に聳える 皇座山から石鎚権現が下りてきた 巨人にひと蹴り浴びせた後 金剛杵を振り下ろして鉄槌を喰らわした スルトの巨躯は海上に向かって倒れた 朧月に魔狼が吠える 立烏帽子に狩衣を着た蛭子三郎に 獲物に飢えたフェンリルが飛びかかった わだつみの男神は魔狼に呑み込まれたが 腹の中で釣り針を引っ掛けた たまらず魔狼は海神を吐き出し 老犬と化して尻尾を巻いて逃散した 離れ島の平郡の庵 ひとりの薄汚い僧が踊り狂う この者は善悪にとらわれぬ 戦などもってのほか ただ仏の名を念ずるのみだ そばの湖では静かに水面が揺れ かつて池之浦から移り住んだ竜女が安堵のため息をつく 島の北東の浜では 朽ち果てた大杉の前で ナグルファルから抜け出した一人の亡霊が佇んでいる 西方にはない異教の聖樹に 絶望という病も癒やされるようだ 深い憂愁も海から聴こえる舞踏の音に晴れるであろう 霧が立ち込める中 蒼白のヘルが黄泉軍を引き連れて 奇岩の上に結跏趺坐する市杵島姫命に攻め寄せた 女神は琵琶を奏でて その旋律は亡者たちとヘルが かつて抱いた感情を掻き立てた 闇の軍勢は武器を置いた 怪物の母アングルボザは 棍棒で平家神社を叩き割った 作物の育たぬ土地に 保食神は五穀を実らせた すると、神社の奥から 平家の落武者たちがよみがえった 女巨人に矢の雨を降らせ 木村半之丞という武士が 単身一騎で巨人を槍で貫いた 半之丞の妻子が現れ、母に抱かれた赤子は 燃える松かさを眺めて笑った 血を洗い流すように雨が降りしきる 死屍累々の池之浦に ひとりロキだけが残された 光の軍の中から大鴉が前に出て 鋭い眼光で睨みつけた その眼を見たロキは たちまち島の北の方へ逃げ出した 光の軍は鬨の声をあげ 天鳥船に乗って再び天上へと昇っていった 大鴉だけは、島の北東の聖なる天山に向かって飛び立った 何が起こるかを知っているかのように

