
おや、今日もまた手が勝手に動きましてね 赤いポーションひとつ、真っすぐ持てないままで 旅人の皆さんは気づきもしませんが 棚に戻すたびに少し変な角度に見えるんです 棚を拭きながら今日も同じことでして 手元だけが昔からどうにも素直じゃなくて 直そうと思った時期も確かにあったんですが 気づけばもう癖として落ち着いてしまいましてね 直らないままでも私は私のままで この赤いひとしずくならそっと届けられますし 笑われてもそういう手なんだと思えば 小さなバグひとつで夜の店も悪くないんです 気づいたのはあの吹雪の夜でしてね 手元がふっと止まって、もう戻らないんだなと 直ると思っていたんですが季節がいくつも過ぎまして この手のままで店を守るのも悪くないんです この手のままでもできることはありまして 赤いポーションひとつで誰かの夜が変わるなら 星影の店としてはそれで十分なんです 小さなバグひとつ抱えて、今日も灯りを置いておきますよ


