Song Cover Image

ミルキダスの蛇とドルイドの戦い 1

「やあ」 と話しかけると、男ははっとドルイドを見たのだった。 「月が綺麗だし、いい夜だ」 カーテンの隙間から、月の光が差し込んでいた。ドルイドは敵を倒したときにミルキダスと出会っている。そのことを思い出していた。 確かにあの時とは身にまとう気が違うようだ。 「お前は嫌いだ」 男は忌々しげに言った。 「嫌われるほど知られてないと思うが?」 ドルイドが返した。ドルイドはちらりとゆりのせきぞうを見た。 「ゆり様に会いたいのか?」 とドルイドが聞くと、男はさらにむっとした表情をした。 「話によっては、協力できることもあるかもしれないが?」 「協力?」 男は少し宙を見上げて、ドルイドの顔を見た。 「協力か。ならちょっと相手をしろよ」 「なんの?」 「戦いさ」 男はミルキダスが浮かべないような顔で笑っていた。 「なんで私と?」 「嫌いな相手と戦う方がいいだろう」 「出会ったばかりでそんなに嫌わなくても……」 ドルイドはちょっと困り顔である。 「他の連中はそんなに嫌いじゃない。黒蛇の男も嫌いだが、あいつはちょっと分が悪い。だからお前しかいない。北の、あのだだっ広い丘に行こう。観客はいらないからな」 男は移動してしまった。 「うーん、ついて行くしかないか……」 ―ちょっと彼に付き合うことになった。お前は帰っていてくれ ドルイドはハインリヒに思念を送った。 ―おい ―だれにも見られたくないらしい (ハインリヒなら分は悪いが私なら勝てそうだってことかな?) ドルイドはそんなことを思いながら移動していた。 (ハインリヒと私が嫌いか……理由は……) ドルイドは北の丘に移動した。男はなだらかな丘の真ん中あたりにいた。うまい具合に他にはだれもいない。 「じゃあ行くぞ」 男の肌に、蛇の鱗のような模様が浮かんでいた。 (濃い気だ。蛇そのものだから当然か?) 男の攻撃は気の力での攻撃だった。男が手を振り払い、気の塊がいくつかドルイドに向かって飛んできた。ドルイドはとっさにバリヤーをはって防いでいる。 (こういうのはおもしろいが、傷をつけたら小さいドルイドに悪いかな) ドルイドはそんなことを思いながらバリヤーをはっていた。男が間合いをつめてきた。 男は右肘を突き出してドルイドの腹に食らわそうとした。ドルイドはとっさに後ろに下がりかけたが、あえて、下がるのをやめてみた。 すると、男は右肘をドルイドの腹の前で止めたのだった。攻撃をやめた男はおもしろくなさそうな顔つきである。 「あれ? 攻撃しないの?」 ドルイドが聞いた。 「普通に戦え。試すようなまねはやめろ」 「あらら、気づかれちゃった? ならばこういう感じで」 ドルイドの右手に気の塊でできた剣のような筋ができた。 男は左手を広げてその前に丸い平べったいバリヤーのようなものを出した。盾のようである。 「やるね」 ドルイドが気でできた剣で攻撃すれば、男は盾で防ぎ、その盾で攻撃もしている。ドルイドは今度は本気で男の相手をしていた。 それをかなり離れた木の側で、ハインリヒは眺めていた。やがて横にヴィクターがやってきた。 「なんであんなことになってるんだ?」 ヴィクターは、戦いの気配を感じて来たようだ。 「どう説明していいやら……」 ハインリヒは説明に困っていた。 「髪が長いのが例のドルイドだろう? もう一人は……だれだ?」 姿はミルキダスだが、身にまとう気はどうにもミルキダスに見えなかったらしい。 やがてあたりに人が集まってくると、ミルキダスになっている男はドルイドから離れて、「やめた」と言って去ってしまった。 ドルイド一人になったので、ハインリヒはヴィクターを誘ってドルイドに近づいた。 「将軍、彼がドルイドです。ドルイド、ヴィクター将軍だ」 ハインリヒはまずドルイドにヴィクターの紹介をした。 「ドルイドです。初めまして」 「噂はかねがね。さっきのミルキダスは一体どうしたんだ? らしくない戦い方だったが」 ミルキダスは敵との接近戦はあまり好まない方なのである。しかも、ドルイドとなぜ戦っているのか、ヴィクターにはさっぱりわかっていなかった。 「詳しくは王に聞いてほしいんですが、彼は今意識を別の者に乗っ取られている状態なんです。」 ハインリヒが説明した。 「え? 乗っ取られた?」 「彼は、悪いやつではないようだ。私が傷つかないようにしてた」 ドルイドが言った。ドルイドを傷つけるのが目的ではなく、自分の力が知りたかっただけなのかもしれない。 「お前も本気ではなかっただろう」 「だが、過去のようにはいかないし、まあおもしろかった。彼は、私とお前が嫌いらしい」 「え? なぜだ?」 「そりゃあまあ、思い当たる理由といったら……」 (嫉妬か……) そういう理由しかなかった。 「普通に会話をすれば目的も教えてくれるんじゃないだろうか。私もこれで失礼します」 ドルイドはヴィクターに頭を下げて、去って行ったのだった。