祇園のバー  重い扉を開ければ いつものカウンター  端と端の定位置 あなたが歌う イエモンのあの曲 私はグラス越し ドリカムのバラードを重ねた 「同志になろう」なんて 笑い合った夜 熱情はないけれど 穏やかな温もりがあった 病室の母に見せた あなたの優しさ 「いい人ね」と笑う顔に 私は救われていた 触れられるたび 心が強張る 「僕が嫌い?」なんて 悲しい目で聞かないで 時間をかければ 変われると嘘をついた 臆病な言い訳で あなたを縛り付けたまま 料理の匂い 満たされたフリをした日々 あなたの背中に 違う誰かの香りがした 責め立てた私の声 響く店の中 本当は知っていた 愛せていない罪悪感 「別れよう」 その言葉が落ちた時  私が思ったのは あなたを失う 痛みなんかじゃなかった 喜んでいた母に なんて説明しよう? そんな自分が ただ、ただ面倒で ああ、だからあなたは 去っていくんだね 愛していたのは あなたじゃなくて 誰かと生きている 自分の姿だった 孤独を埋めるための 綺麗な模造品 傷つけた代償は 静寂だけ 優しさに甘えて 心を閉ざして それでいて 寂しいなんて 私は なんて卑怯な生き物だろう ねえ お母さん 私、ひとりでも  生きていけるかな