遠くで かみなりが眠る 濡れた風が 髪を撫でた 誰もいない夏の道 夜だけが 息をしてる 軒先に揺れる 風鈴の音 途切れ途切れの 虫の声 水たまりに映る月が 知らない顔で こちらを見る 夕立ちは もう過ぎたのに 空はまだ 泣きたそうで 白い靄が 鳥居を包む 帰り道を 少し隠した ねぇ 誰かが呼んだ気がした 振り向くたび 闇が増える 懐かしいのに 思い出せない あの夏の 約束みたいに 静かな夜ほど 心は深く沈んでゆく すずむしの声が 遠い記憶を 撫でるから 闇の奥には 何かがまだ 潜んでいて 怖いのに どうしてだろう 少しだけ 会いたいと思った 濡れた石段 裸足でおりる 青白いあかり 揺れるかわべ みなもを走る 小さな波が 誰かの足跡みたいだった 木々の隙間で 息を潜める 名も知らぬ 夜の気配 近づくほどに 遠ざかって 胸の奥だけ 冷えてゆく もしもあの日 君が消えずにいたなら この夜も ただ綺麗なだけだったのかな 線香花火みたいに 消えるちょくぜんの光だけが こんなにも 優しく 焼きついている 夕立ちの向こうで 誰かがそっと笑ってる 夏の匂いだけ 今もここに 残したまま 静けさをふかくしてゆく 怖いほど 綺麗な夜に 私はまだ 君を探している 遠雷が 空へ溶ける 風鈴だけが 揺れていた 夜は何も答えずに ただ静かに 更けてゆく


