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かげろう(ニセッツ)

水槽の底に沈んだ鍵が 夏草の匂いにふいに光る 日傘が転がった昼下がりの やわらかい場所をまだ覚えてる 何も残さないように 君は泳ぐ 薄い氷の下を 息もせずに かげろうの奥の横顔 指の先がすり抜けてく 濡れた砂の温度だけ残る 金魚すくいの破れた網で 君の輪郭をなぞってみたけど 裏返しのてるてる坊主が 知らない方角に揺れている 曇りガラス越しの影が ゆっくり服を脱ぐように 夕立が止んだ庭先で ヤモリの尻尾が跳ねている 何も残さないように 季節が回る ただ君の匂いだけが甘い かげろうの奥の横顔 風が連れてく花びらの 行き先はもう知らない 何も残さないように 君は泳ぐ 薄い氷の下を 息もせずに かげろうの奥の横顔 指の先がすり抜けてく 濡れた砂の温度だけ残る 透明な水の底で 君が笑う 錆びた自転車だけが残る午後 水槽の鍵はまだ光っていて 誰にも開けられないまま沈む