
「お父さんも言ってたでしょ。ガーベラ母さんに別人格があるって。その話なんだけど、その別人格って、人間の女性なんだ」 「……え?」 ジンラはきょとんとした顔をしている。 「お母さんに、人間の女性が時々入っていて、僕は、その人間の女性の時に産まれたんだよ」 「人間の女性?」 「僕は、あの事件の時には、まだそのことを知らなかったんだ。知っていたら、その時に言えたんだけど。お母さんには寿命があるから、お父さんにも知っていてほしかったんだよ」 「人間? 寿命? 突然何を言い出すんだ。今のガーベラはどちらのガーベラなんだ?」 「私は、実は人間だったの。ごめんなさい。だます気はなかったんだけど」 「あの事件ってまさか」 「お母さんはあの王妃様なんだよ」 「な……?」 ジンラは立ち上がっていた。 「ほ、本当なのか? 君があの王妃だっていうのか?」 「そうなの」 「なんでそんなことに」 「最初は、ガーベラの声がでなくて、魂が似てる私と体を交換して、歌ったりしていたの。私はガーベラ様になって、ひょんなことからジンラとああなって、アマンザができたの。ショックすぎるわよね。ごめんね。最近いろいろな神様にばれちゃって、それでジンラにも言っておこうと思って」 「この前お母さんが死にかけた時、僕は言いたかったんだよ。知らないうちにいなくなっちゃうなんて悲しすぎるから」 「信じられない。私は、彼女に罰を与える所だったんだぞ。なんてことだ。私には神である資格なんてない」 ジンラは頭に手を当てて悲痛な声をあげていた。ジンラの体が薄くなっていくのに気がついたゆりは、あわててジンラに抱きついていた。 「ジンラは私を助けてくれたでしょ。それも忘れないで。アマンザが産まれてから、すべてが始まったのよ。ジンラのおかげで、ハロルドの子供だって一杯できたの。ジンラは何も悪くない」 「しかし……」 「ジンラは私の癒やしなの! 見てるだけで幸せなの。だから消えないで!」 ゆりは心を込めて叫んでいた。 「ガーベラ……本当に君は人間なのか?」 「うん」 「あの時のこと、怒っていないのか?」 「全然怒ってないわよ。むしろ、ジンラには感謝してる。だから、あのことはもう忘れて」 「ガーベラ……って呼んでいいのか?」 「ええ。これからも、別人格のガーベラだって思ってくれるとうれしい」 ゆりは泣きそうな顔で言った。 「ガーベラ……」 ジンラはゆりの背中をなでた。 「実は僕、何度か人間界のお母さんに会いに行っていたんだ」 アマンザがそのことも告白した。 「そうなのか? しかし、人間の女性が女神に入ることが可能なんて初めて聞いた。アシュランにばれても大丈夫かな」 「アシュラン様はもう知ってるわよ。だから大丈夫よ」 「他の恋人達も知ってるのか? いつ知ったんだ?」 「ハロルドには結構前にばれて、次にラーズにばれて、グレンにばれて、オルガ、サラディン、ラクア、オルガからはつい最近のことなの。ラクアは数日前」 「そうなのか。みんなで私に黙っていたとは……」 「あの事件があったから、逆に言いにくくなっちゃったの。ジンラが気にしちゃうだろうって思って」 「君はアマンザとライラという贈り物をくれたのに私は……」 「ジンラは私の憧れの神様なの。ジンラの笑った顔が大好きなの。だから、微笑んでガーベラって呼んでほしい」 「ガーベラ……ガーベラ……」 ジンラは泣きそうな顔で女神の名前を呼んでいる。ゆりはぎゅっとジンラに抱きついていたのだった。 その後ゆりは人間界に戻った。目覚めたガーベラにアマンザが、「実はもう一人のお母さんのことを、さっき言った所なんだ」と知らせた。 「そうなの。ジンラ、ごめんなさいね」 ガーベラはジンラに謝った。 「いや、私は自分の神としての不甲斐なさにあきれているだけだ。彼女が生きていてくれて本当によかった」 ジンラはサラディンの神殿にゆりがいたことを思い出し、今になってようやくそういうことか、と納得していた。オルガがゆりの話をしていた時も、かなりゆりに対して好意的だったことも。 (みんなで私に秘密にしていたとは……) ジンラは男達に腹が立ってきたので、しばらく男達の神殿に酒を運ばなかったのだった。 「君はアマンザとライラという贈り物をくれたのに私は……」 「ジンラは私の憧れの神様なの。ジンラの笑った顔が大好きなの。だから、微笑んでガーベラって呼んでほしい」 「ガーベラ……ガーベラ……」 ジンラは泣きそうな顔で女神の名前を呼んでいる。ゆりはぎゅっとジンラに抱きついていたのだった。 (みんなで私に秘密にしていたとは……) ジンラは男達に腹が立ってきたので、しばらく男達の神殿に酒を運ばなかったのだった。

