久しぶりに名前を見た それだけで指が止まった 「元気?」 たった三文字なのに 返事が思いつかない 元気だよ って打って消した まあまあかな も違う気がした 本当のことを書いたら 困らせそうで 結局 画面を伏せた あの頃はくだらないことで 何時間でも笑えたのに いつから僕ら 元気なふりまで 上手くなったんだろう ちゃんと元気になってから 会おうとしてたら たぶん僕ら ずっと会えないままだ 何者かになってから 胸を張ろうとしてたら 何にもなれない今日を ひとりで隠すだけだ 返せないままの「元気?」が 暗い部屋で光ってる 会いたいって それだけなのに 眠れなくて水を飲んだ 冷蔵庫の音だけ聞こえた 昔の写真を探したら 変な顔した僕らがいた 将来のことなんて 何も知らないくせに どうしてあんなに 笑えてたんだろう あいつはもう うまくやってるかな 仕事とか 恋とか 夢とか 僕よりずっと 先へ行ってたら 会うのが少し怖い でも もしかしたら向こうも 同じ夜の中で 何を書けばいいか 迷った末に 「元気?」 それだけを 送ったのかもしれない ちゃんと幸せになってから 会おうとしてたら 僕らの人生は 待ち合わせに遅れてしまう 自慢できるものなんて 今はなくていい 笑えない日があったことも そのまま持って行けばいい 言えなかったことなんて 会ってから考えよう 今夜くらい 格好悪くていい 窓の向こうが 少し白くなる 鳥の声が聞こえる 結局 一睡もできなかった もう朝だ 画面を開く まだそこにある 「元気?」 長い文章を書いた 全部消した また書いた それも消した 最後に残ったのは 「久しぶり」 少し迷って 「会わない?」 送信 ………… こんな二行に 朝までかかった すぐに返事は来ない それでいい 昨日までの僕なら 送れなかった 窓を開ける 冷たい空気が入ってくる 人生が変わったわけじゃない 悩みが消えたわけでもない 僕は今日も 僕のままだ ただひとつだけ 会いたい人に 会いたいって言えた


