胴の鼓動が鎧を揺らす 三味線が鋼糸みたいに弾け、火花の匂い 笛が風を切って前線を示す 影法師の名は十通り 猿飛佐助、霧隠才蔵、由利鎌之助 乾いた土を蹴る足 茜の紋が胸で脈を刻む 合図は手の甲一つ 言葉より速い意思伝達 焚き火の灰、袖に残して 敵陣の耳を奪う 「見よ」では遅い 見る前に動く —それが稼業 野を切り拓く拍—ドン、ドドン 笛の旋回 頭上を円描く 心拍は軍配、指揮は呼吸 息を合わせろ 十勇の息が一つになる 「おおっ!」 赤備え、名は表だ 功は裏で積む 駆ける夜、跳ぶ野、空を踏む鼓— 主の矛先を通すため 俺らが風になる 筧十蔵、火走りの術 火点の連鎖は星座みたい 望月六郎は索敵の眼 草の揺れで兵数読む 根津甚八の腕は鎖鎌 月の形を地面に描く 三好兄弟の祈りは拳 静寂ごと道を拓く 穴山小助が背守りを受け持ち 突風みたいに交代 海野六郎は土の匂いで道順を決め 隊列を細く早く ドン ドドン ドドン (掛け声「えいっ!」) 締めの鋲が光り、大太鼓は地鳴り 三味線は歯切れよく 斬撃のリズム 敵の地図に余白を作る —そこへ流れ込む 偽の足跡、逆さの荷痕、笛の二重和声 「見た」と言わせる前に「見せる」影絵 秀歌は不要 勝敗は足の速さで決まる 十勇の息が一つになる 「おおっ! はっ!」 赤備え、名は表だ 功は裏で積む 闇路は道標、野は走路、空は抜け道 主の矛先を通すため 俺らが風になる 「風になれ!」—笛が上昇、太鼓が追い打つ 足袋の砂を払って 名を残さず撤収 残るのは布の擦れる音と 鼓膜の余白 次の夜明けまで 矢筒の中で静かに待つ