
[Intro: Muted Rhodes chord, subtle phone interference beep] [Voice: Intimate, calm, steady pacing] 『音の跡』へようこそ。 深夜二時を回りました。今夜も冷たい夜風が窓を揺らしています。 語り手を務めます、陸奥巡(みちのく めぐる)です。 今夜持ち込まれた遺品は、十年以上前に使われていた、折りたたみ式の古い携帯電話です。 外装の塗装は剥げ落ち、ヒンジ部分は緩み、充電端子には錆が浮いていました。 持ち主は、郊外の古い団地、302号室で亡くなった一人暮らしの老人でした。 身寄りはなく、いわゆる孤独死として部屋が片付けられた際、処分寸前で私の手元へ運ばれてきたものです。

