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【悲報】5億年ボタン押した結果www【戻れない】

5億年ボタンを押したらという思考実験をして 生まれた曲です。歌詞の下に設定話あり。暇な方は読んでね。 [Start] [Intro] [Verse] 君のいない部屋で 声の残響(のこり)が ふいに揺れた “何でも叶う”と囁いた あの夜の老人の影 気付けば世界は遠く 肉体は朽ち 意識だけが歩いた 野犬の瞳(ひとみ) 蟻の記憶 誰かの命を渡り続けて [preChorus] 季節の境目も もう思い出せない なのに胸の奥で ひとつだけ残る影 [Chorus] 数万年 数百万年 まだ終わらないのか 世界は変わり 僕だけが やけに古くて 数万回 数億回 生まれ変わっても 意識は巡り 名前さえも 霞んでゆくのに それでも なぜか君を 思い続けていた 終わらない旅の果てで やっとわかるんだ [Verse] 鳥の空 魚の深海(そこ) 文明(ひかり)が灯り やがて消えて 争いも祈りさえも 砂のように風に流れた 初めて“時間”が痛み 長いだけの記憶が積もって 気付けば僕はただの 漂う観測者(たびびと)だった [preChorus] けれど心のどこか 君の笑顔だけは朽ちなかった それが唯一の 帰る場所のようで [Chorus] 1億年 2億年 何度目の空だろう 風の匂いも 大地の色さえ もう昔とは違う 千の文明 万の祈り 生まれては消えて それでも僕は どこかで君を探していた 朽ちた星の片隅で ひとつだけ残った “想い”だけが 僕をまだ 旅へ送り出すんだ 【bridge】 言葉を捨てた命に変わり 姿を変え 流されても ひと粒の記憶が 宇宙の底で まだ呼んでいる “ここにいるよ”と 誰でもない 僕自身へ [Chorus] 幾千の日蝕(にっしょく) 幾万の地殻変動 空も星も変わり果てて 太陽は老いて 赤く息づく 数億年 あと何年 もはや五億年の直前 地球は 死の星と呼べる姿で それでもまだ 終わりを怖れずにいた はじまりを知らない旅人のまま [Outro] 君の名を もう言えなくても その気配だけで 僕は帰れる そうこの祈りが 世界にもどるためのかぎ ぼくはなんど生まれ変わっても祈り続けたんだ        5億年ボタン 葬式の匂いは、いつまでも消えない。白い花と線香の煙が混ざり合って、胸の奥に重く沈んでいた。 棺の前に立ちながら、私はただ、目の前の光景が現実だと理解できずにいた。 “君”がもういないという事実だけが、やけに遠く、そして残酷だった。 夜になり、ひとりで帰り道を歩いていると、道端に老人が立っていた。 薄いコートの裾が風に揺れ、街灯に照らされても影の部分が濃すぎて、顔がよく見えない。 「願いがひとつ叶うボタンがある。押してみないかね」 突然そう言われても、私は返事も考えられなかった。 ただ心が空っぽで、現実に穴が空いているようだった。 老人は小さな箱を開き、中から赤く輝くボタンを見せた。 パチンと押せば音がしそうなほど鮮やかな色をしていた。 「押した者は五億年を生きる。しかし戻った時、たった一つ願いを叶えられる」 「五億年……?」 理解より先に言葉が出た。 そんな時間、想像すらできない。 だが老人は淡々とした声で続けた。 「五億年のあいだ、君は死んでも終わらん。意識は次の生へ移り続ける。  石になろうが、虫になろうが、別の生へ連鎖していく。  ――それでも、願いがあるのなら」 その言葉に、胸の奥で何かが動いた。 君を取り戻したい―― その思いだけが、死んだ心臓のように小さく震えていた。 気づけば私は、ボタンを押していた。 押した瞬間誰もいなくなった この世界に僕だけになった。 どこを探しても誰もいない。ーーーー 最初の死はあっけなかった。 あの日、私は道端で餌を探す野犬に体を食われ、意識はその獣へ移った。 肉の匂い、土の感触、夜の風の冷たさ。 人間の時とはまるで違う世界の色が広がっていた。 だが野犬としての寿命が尽きると、私はまた別の生へ落ちていった。 アリになり、鳥になり、魚になり、爬虫類のようなものになり、草となり、光となり、土となり―― 死ぬたびに意識は滑るように次の命へと移っていった。 どれくらい時間が経ったのかは、すぐに分からなくなった。 数万年、数百万年……地面の形が変わり、大陸が割れ、海が沈み、森が砂になっていくのをただ見ていた。 文明が興り、滅び、また生まれ、また消えた。 そのたびに私は別の生の中から世界を見つめていた。 ぼんやりとした気配があった。 誰かを失った記憶の影。 名前は思い出せない。 顔も、声も、もう霧のように散ってしまった。 けれど、「大事だった」という感情だけが、ゆっくりと胸の奥で残り続けていた。 その感情は、何度死んでも消えなかった。 数億年が過ぎる頃には、私はもう“時間”という概念をほとんど失っていた。 ただ世界が変化し続けるのを、遠い場所から眺めているような感覚だった。 空は赤く染まり、太陽は膨らんでゆっくりと呼吸しているようだった。 地球は乾き、海は縮み、森は灰色の影になっていた。 風が吹くたびに、星の終わりの匂いがした。 死の星―― そんな言葉が自然に浮かぶほど、世界は静かで、あまりに老いていた。 ある生を迎えたとき、私はふと気づいた。 なぜまだここにいるのか。 なぜ何度も何度も意識を受け継いできたのか。 その答えは、影のような“感情”だった。 名前を忘れても、姿を忘れても―― 私は、誰かを取り戻したいと願っていた。 その誰かを、ずっと失っていたのだ。 君を。 それだけは、五億年経っても消えなかった。 気づくと、私は静かな闇の中にいた。 次にどんな命へ移るのかも分からない。 だが一つだけ、はっきりと感じるものがあった。 ――願い。 五億年の終わりが近いのだろう。 世界は死にゆく星になり、私の意識は最初の形すら忘れかけている。 けれど、胸の奥に残ったひと粒の光だけは失われなかった。 “想い”だけが、最後の私だった。 それだけを握りしめて、私は次の闇へ落ちていく。 どこかでまた、君を探すために。 僕は何度生まれ変わっても君を見つけるんだ。