
雨を切って走った。 背後から、足音が追いかけてくる。 水たまりが砕け光が散った。 息が荒く肺が焼ける。 角を回り、壁に背中を押しつけた。 影が通り過ぎるのを待つ。 濡れた舗道は足を取る。 隣の手が震えているのがわかる。 階段を駆け上がり、屋上に出る。 夜風が顔に叩きつけてくる。 街の灯りが遠くに沈んでいく。 追手の影が一瞬だけ途切れた。 裏口を抜け、地上に降り立つ。 視線が背中に突き刺さる。 息を殺す。歩みを進める。 喉の奥が焼けつくように乾く。 地下道に潜り込み、人の波に紛れた。 雨音が消え、鼓動だけが響く。 濡れた指先が俺の腕を掴んだ。 その力が必死さを語っていた。 前方に影が立ちはだかった。 体が先に動き、肩を弾き飛ばす。 抗う声が喉の奥で裂けた。 振り返らずに走り抜ける。 狭い路地を抜け、息を絞り出す。 足音はまだ背後に残っている。 影は伸び追いすがる。 胸の奥が裂けるように痛む。 古びた倉庫が見えてきた。 安堵はない。夜の闇が口を開けていた。 そこに何かの気配がある。 まだ終わりは来ていない。 夜の底で答えは見えない。 闇だけが行く手を知っていた… (続く…予定)

