水槽の隅、朝焼けの尾が溶けていく。 既読にならない怒りが、羊水みたいに漂っていた。 街路樹は伸びをしながら、眠たげな夢を捩じる。 折れた枝は、空に向かって指を伸ばす。 仮面を外すたびに、風が頬を撃つ。 名も無き声が、交差点の下で滲んでいく。 缶コーヒーは、コンビニの前で冷め切ってた。 沈黙のブラックボックスみたいに。 掌に積もるのは、熱じゃなく、迷いの層。 (迷いの層) 犬の言葉は、砂嵐混じりのラジオの音。 本気の怒りなんて、どこか少し滑稽で。 路地裏の屋根の上、湿った匂いの中で月が微かに揺れる。 まるでホログラムみたいに。 「複製のような溜息が、屋根に積もって消える」 ——夜明け前—— 咆哮と沈黙が交差した路地で、 声を失くした影が空き缶を踏み鳴らした。 アルミの悲鳴が、夜に刻まれる。 残されたのは―― 複製みたいな、溜息だけだった。 夜に置き去りの、名も無き遠吠え。



