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紅蓮の華

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常夜廓の 格子の影 産声あげた 夜の中 昼の青さえ 知らないわっち 提灯ばかりを 星と呼んだ 呼出だった 母の簪 鏡の前で 揺れていた 「あの子はいつか 呼出になる」 大人たちだけ 知っていた 蝶の帯より 重い名前 わっちを世界に 立たせる名前 花道の外の 夢なんぞ わっちにゃ要らないでありんす 咲いて 咲いて 紅蓮の華 常夜廓の 夜を裂き 誰のものにも ならなくて わっちはわっちで ありんす 燃えて 燃えて 赤い格子 この街が消えるのなら 常夜廓として生きたわっちが 常夜廓として 散るでありんす 花道通れば 鈴が鳴る 新造たちが 袖を畳む わっちの微笑み ひとつだけで 夜の値段が 変わってく 父の名なんぞ 要らないでありんす 母の唇が くれた名前 この常夜廓に 咲くためだけの わっちの命で ありんすから 扉の向こう 若い娘ら 「お逃げなんし」と 泣いてゆく 炎の色に 簪が揺れ 母の背中を 思い出す 咲いて 咲いて 紅蓮の華 常夜廓の 夜を裂き お逃げなんし お若い衆 わっちのぶんまで 生きなんし 燃えて 燃えて 赤い格子 この街が消えるのなら 常夜廓として生きたわっちが 常夜廓として 散るでありんす 初めて挿した べっ甲の簪 母の香りが まだ消えない 客じゃなくとも 聞きなんし これが常夜廓 最後の歌 おいでなんし 火の神さま 最後の舞を 見ておくんなんし 格子も座敷も 赤く染まり わっちの影まで 華にする 咲いて 咲いて 紅蓮の華 常夜廓の 夜を裂き 朝など要らない 常世の夜に わっちの名前を 残すでありんす 誰もいない 焼け跡に 花びらひとつ 舞っていた 朝を知らない 街の空 黒い煙が 昇っていた