[Verse 1] ラウンジの低い照明の中 氷が溶ける音だけが響いてた 「…カズちゃん?」 カウンター越し、 不意に呼ばれた懐かしい愛称(なまえ) 振り向けば そこには 見違えるほど 綺麗になった「彼女」が立っていた かつての 小さな三つ編みはもうない 大人の香水を纏(まと)った ひとりの女性(ひと) 私はグラスを持つ指を わずかに震わせ 「カズちゃん」という 昔の仮面を もう一度 鏡の中から 呼び戻す [Pre-Chorus 1] 吸い込まれるような その瞳は あの日 ロイヤルホストで笑っていた 幼い少女の光を 閉じ込めたまま 私は あの頃よりも ずっと 「女」である自分の身体(からだ)を 呪っている [Chorus 1] あと少しで 家族になれたのかな 壊れた器(からだ)でも 母になりたかった けれど 私には 越えられない壁があった 父さんの隣で 「女」でいることができなかった 愛しているのに 触れられない 透明な境界線が 私たちを隔てていた [Verse 2] 3人で過ごした 週末の午後 3DSの 小さな画面が 言葉にできない 想いをつなぐ窓だった 「一緒に狩ろうよ」 私はあなたを誘った あの時 私は 産めない絶望も 役割という檻も すべて忘れて あなたを守る 騎士(ナイト)になれた あなたの父さんの 指先が触れるたび 私の肌は 氷のように 剥がれ落ちていった 愛したいのに 抱かれたくない その矛盾に 焼き尽くされながら 画面の中の草原だけを 共に駆けた [Pre-Chorus 2] 「カズちゃんがいなくても、狩れるようになったよ」 ドアの向こうへ消えた 小さな強がり 愛おしさと 申し訳なさが 溢れ出して 私は リビングのソファーで 立ち尽くした 身体が伴わない愛は 罪なのだろうか [Chorus 2] 「ごめんなさい」と 唇を噛んだ夜 私は 母であることを 諦めたんじゃない あなたの「カズちゃん」を 殺してしまったんだ 壊れた器(からだ)で 愛を注ごうとして 結局 あなたを 置き去りにしてしまった あの日のあなたの涙 今も消えない [Bridge] 「新しいお母さん、すごく優しいの」 大人の女の微笑みで 語るあなた 救われたのは 私の方かもしれない 私がなれなかった「正解」の家族の中で あなたが 今 幸せに咲いていることが 暗い砂漠を歩く 私の 唯一の勲章(しるし) [Outro] ラウンジの微かな灯り 彼女を照らす 本当に 綺麗になったね 画面の中の冒険は 遠い日の幻 幸せでいてね 愛しき 私の戦友(とも)よ 「元気でね」 声に出さず 祝福を 12年越しの 再会に 静かな乾杯を


