
タタンタンタン タタンタンタン タンタン 飛んだん 入社二年目の夏だった 北関東の空は白く焼けて 営業車の窓の向こう アスファルトまで揺れていた 午前の取引先はいい感じ 私の説明にも頷いてくれた 「よかったね」って先輩が笑う それだけで少し涼しくなった お昼どうするって聞かれて 先輩の後をついていく 古いラーメン屋の扇風機 夏の匂いが回ってた 「冷やしタンタンで」 先輩がそう言ったから 私も同じものを選んだ 少し近づけた気がした タンタン 来たん 冷えた器だったん タタンタンタン 胸が鳴ったん タンタン 選んだん 先輩と同じだったん タタンタンタン ちょっと嬉しかったん 白いブラウス 今日は大事だったん だから胸元 守ったつもりだったん ティッシュ 置いたん ちゃんと置いたはずだったん タタンタンタン それが始まりだったん 一口目は無事だった 二口目もまだ平和だった 麺をすくって少し笑って 私はたぶん油断してた 先輩の視線がふと止まる さっきから少し下を向く え なに どうして 胸元を見てるんですか だめです 先輩 営業中です そんなふうに見られたら 平気な顔できない だめです 先輩 さすがに今は でも少しだけ 胸が鳴ってしまったん タタンタンタン 期待しちゃったん タタンタンタン 赤くなったん そっと見下ろした 白いブラウス そこには赤い もやしがいたん タンタン 飛んだん 白い胸についたん タタンタンタン 息が止まったん タンタン 跳ねたん 先輩 見てたん タタンタンタン 胸じゃなかったん ティッシュ 落ちてたん 守りは床だったん タタンタンタン もう終わったん 白いブラウス 午後も営業だったん この赤だけが やけに目立ったん タンタン 飛んだん タンタン 染みたん タタンタンタン どうすりゃいいん タンタン 飛んだん タンタン 見てたん タタンタンタン 逃げたいん 水で叩いたら 少し広がった 薄いオレンジの記憶が 胸元に残った 「大丈夫?」なんて 優しく言うから 大丈夫じゃないのに 頷いてしまった 恥ずかしいのは ブラウスだけじゃない 見られて困った私が 少し嬉しかったこと タタンタンタン タタンタンタン タンタン 飛んだん 午後の営業まで 少し時間あるから 新しいブラウス 買ってあげるよ なんでもないみたいに 先輩が言った 夏のラーメン屋で 世界が止まった タンタン 飛んだん 白い胸についたん タタンタンタン 涙目だったん タンタン 跳ねたん 先輩 笑ったん タタンタンタン 優しく言ったん タンタン 飛んだん 恋まで染みたん タタンタンタン 夏が変わったん ティッシュ なかったん 守りは床だったん だけど今なら 言える気がするん タンタン ありがとう 赤いもやしよ タタンタンタン 距離が縮まったん タンタン ありがとう 冷やしタンタン タタンタンタン 好きになったん 北関東の夏 白いブラウス 赤い小さな染み 忘れない タタンタンタン タタンタンタン タンタン 飛んだん

