
桜の木の下に 小さなスコップで 缶を埋めた 十歳の春 「大人になったら 一緒に開けよう」 君は小指を 先に出した 十年が 過ぎたのに ひとりで掘り起こす 土の冷たさ 約束は まだここにある 名前を呼んでも 誰も来ない 覚えていたのは わたしだけ 缶のふたは 錆びて固くなっていた 爪が割れても 開けたかった 中には 君の下手な絵と 「わすれないで」と 丸い字 十年が 過ぎたのに ひとりで掘り起こす 土の冷たさ 約束は まだここにある 名前を呼んでも 誰も来ない 覚えていたのは わたしだけ 君はもう 忘れたかもしれない それでも 約束は 約束だから ひとりで 待ちつづける 桜の下 約束は まだここにある 名前を呼んでも 誰も来なくても 覚えているよ わたしが 蓋の上に 花びらがひとつ

