ひらり ひらり 落ちるたびに 名前をひとつ 忘れてゆく 薄紅に染まる指先 誰のものだったのかも 土の奥で 誰かがまだ 優しく呼んでいる気がして 振り返るたび 影が増える 帰り道は もう無いのに 綺麗なものほど 壊れやすいと 誰が決めたの? ねえ この香りは 何を隠しているの 櫻の樹の下には 眠れない夢が埋まっている 笑っているのに どうして 涙の味がするの 櫻の樹の下には 誰にも言えない春がある 触れたら最後 戻れない それでも 綺麗で 白い喉に 絡みついた 言葉にならない約束 花びらひとつ 口に含めば 甘く 苦く 溶けてゆく 優しさだけを 集めたような この景色の裏側で 静かに腐敗する時間が 私を呼んでいる 忘れていいよと 囁く声が やけに近くて ねえ この温もり 誰のものだったの 櫻の樹の下には 終わらない夜が 埋まっている 息をするたび 少しずつ 何かを失くしていく 櫻の樹の下には 誰かの「さよなら」がある 拾い集めた花びらで 私は出来てる 掘り返さないで もう 戻れないから 優しいままで 終わらせてほしいの ほら またひとつ 落ちてきた記憶が こんなにも綺麗で こんなにも 怖い 櫻の樹の下には 確かに命が埋まっている 咲き誇るほど 鮮やかに 消えていったものたち 櫻の樹の下には 私もいつか眠るでしょう その時 誰かがまた 綺麗だと言うの 花びらの音 やがて静寂へ


