
輪ゴムで 人生を束ねる 机の上に 散らばる今日を 請求書ごと 夢ごとまとめて 切れないように そっと押さえた 昔の予定は 角が曲がって やる気の紙は 湿っていた 大丈夫ですと 書いたメモだけ 何度もほどけて 床へ落ちる 輪ゴムで 人生を束ねる 立派な紐など 持っていない 引っ張りすぎれば 切れるけれど ゆるすぎたなら 全部こぼれる 輪ゴムで 人生を束ねる 崩れかけでも まだ束になる 形が悪いと 笑われたって ばらばらよりは 少し強い 引き出しの奥で 眠っていた 茶色い輪っかが 手首に触れる こんな小さな 頼りなさにも 支えられる日が あるらしい 夢の紙束は 厚すぎるから 一度で全部は まとめられない まずは今夜と 明日の朝を 細い輪ゴムで くくってみる 輪ゴムで 人生を束ねる 余った端が 震えている 完璧じゃない 締め方だけど 逃げ出すものを 少し止めた 輪ゴムで 人生を束ねる 切れそうな音が 胸に似ている それでも伸びて 戻ろうとする その癖だけは 見習いたい 誰かの人生は 箱入りで リボンも綺麗に 結ばれている 私のほうは 輪ゴムひとつで 中身が少し はみ出している でもはみ出した そこからだけ 変な光が 漏れていた 整わないから 終わりじゃなくて 整わないまま 息をしていた 輪ゴムで 人生を束ねる 今日はここまで 持てばいい 遠い未来を 縛る力は 今の私に なくてもいい 輪ゴムで 人生を束ねる 明日になれば またほどける そのたび何度も 結び直して 生活という名の 束を抱く 伸びきった輪が 手の中で鳴る まだ使えるよと 言うみたいに 私は少し 笑ってしまう こんなもので 救われている 崩れかけた 人生だけど 全部捨てるには 惜しかった 輪ゴムの跡が 残るくらいに 私は明日を 抱えて眠る

