暗転の中 袖で息をそろえる 遠くのざわめきが 波のように寄せる チューニングの音に 心拍を合わせて 最初の一音が 喉の奥で迷う 見上げた先に 観客席の片隅 ひとつのライトが そっと揺れていた 上手さより **角度(むき)**がいる 声量より 温度の行き先 **拍(はく)**をひとつ 靴裏で刻めば 沈黙さえも 合図になる 観客席の灯台 海みたいな暗がりで 私を呼ぶ一点 「がんばれ」じゃなく 「ここにいるよ」 その揺れだけで 波がおだやかになる 心 × エネルギー(エネシン)= 進む力 ステージの端から 夜がほどける ミストの光が 埃を金に変え 緊張の糸が 少しだけ緩む 君が小さくうなずく それだけで 迷子だったメロディが 帰る場所を見つける 増やすより 削っていい 飾りはいらない 真ん中の温度 客席と舞台のあいだ 風の通り道 同じ高さで 息を渡そう 観客席の灯台 遠すぎる距離でも 光は届く 「つらかったね」を コードに溶かし 指先の震えごと 君へ流す 心 × エネルギー(エネシン)= 灯る回路 世界の明度が ひとつ上がる (無音の一拍) 正しさよりも あなたの痛点(いたみ) 触れない距離で そっと守る (無音) 客席の一点 海図の星印 そこへ向かえば 嵐は抜ける 観客席の灯台 ゼロだった式に 灯りが差し込む 角度・温度・拍がそろえば 届かなかった声が 歌へ変わる 心 × エネルギー(エネシン)= 変わる世界 終演の鈴が鳴っても 消えないで 君の小さな光が 私の帰港 撤収の音が 波のように遠ざかる 空になった客席に 余韻だけが灯る