
風裂く遠吠え
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V5.5
山越えの道 尋ねれば 町の人みな 顔曇る この先の峰 越えるなら 今はやめよと 声を寄せる 近ごろ山に 狼増え 旅の行く手を 阻むという 里へ下りて 荒らしはせぬが 道へ寄るもの 牙を剥く 都へ続く 近道ゆえ 人の往来も 増えたころ 木を伐り道を 広げた果て 山の静けさ 揺らぎ出す 測りの杭が 打たれた日より 群れの遠吠え 増えたという まるで何かを 守るように 同じあたりで 道を塞ぐ 風裂く遠吠え 誰を呼ぶ 道を塞ぐ牙 何を守る 怒りじゃないと 響くのならば わたしは山の 奥へとゆく 今夜狩人 山へ入る 道を取り戻す そのために 狼払い 道を開くと 火を囲む声 低くなる シエラはそっと 申し出る その山越えて 都へ行くと ひとりで越える 術もなく どうか道中 ともにと願う 危なき時は 下がれよと 渋る狩人 目を細め 条件つきで 許されて 夜明けの山へと 足を踏みだす 風裂く遠吠え 誰を呼ぶ 道を塞ぐ牙 何を守る 怒りじゃないと 響くのならば わたしは山の 奥へとゆく 木立のあいだ 走る影 金の瞳が こちら見る 低いうなりが 土を這い 張りつめた弓 鳴りひびく 放たれた矢に 葉が散って 群れは身を翻し 駆けてゆく 逃げるばかりじゃ ないその牙 何かを背にして 立ちはだかる 寄れば退き なおもまた 同じ方へ 人を引く 風裂く遠吠え 誰を呼ぶ 道を塞ぐ牙 何を守る 怒りじゃないと 胸が知るなら わたしは山の 奥へとゆく 追われた群れが 辿り着く 山の最奥 木々の影 苔むす石が ひとつ立つ 忘れられたる 眠りのしるし その前に立ち 傷つきなお 狼たちは 牙を剥く この遠吠えは 怒りじゃない 誰が眠るか 次の歌へ

