フチコ「服を用意してぇな……」 ビーちゃん「その前に、ステッカー、取っておきます?」 フチコ「せやな……。いつまでも貼っとくわけにいかんしな」 [ステッカーの端を、かりかり] フチコ「あ……」 ビーちゃん「どうしました?」 フチコ「端っこ、ちょっと浮いた」 ビーちゃん「はい。そのまま、ゆっくり」 フチコ「……あかん」 ビーちゃん「まだ何もしてませんよ?」 フチコ「ここからビリビリするんやろ? 指が進まへん」 ビーちゃん「じゃあ、ビーちゃんが剥がしましょうか?」 フチコ「……ほな、頼もかな」 ビーちゃん「はい。じゃあ、いきますね」 フチコ「待って待って待って。未だ心の準備ができてないねん」 ビーちゃん「わかりました」 [少し間] フチコ「……よし」 ビーちゃん「では」 フチコ「待って。今のは、準備を始めるほうの『よし』や」 ビーちゃん「準備の準備ですか?」 フチコ「順番があんねん……」 ビーちゃん「じゃあ、手、離しますね」 フチコ「あ、離したら端っこ、またくっつくやん」 ビーちゃん「どうしたらいいんですか」 フチコ「持っといて。まだ引っ張らんと、持っといて」 [少し間] ビーちゃん「フチコさん」 フチコ「なんや」 ビーちゃん「このままでいいんですね?」 フチコ「……それは困る」 ビーちゃん「ですよね?」 フチコ「……ほな頼むで。優しくしてな」 ビーちゃん「はい!」 フチコ「まず、いち、にの、さんとか、そういう——」 ビーちゃん「えいっ!」 [ビリビリッ!] フチコ「ひゃーっ!」 [少し間] ビーちゃん「取れましたよ!」 フチコ「……あんな」 ビーちゃん「はい」 フチコ「優しくしてな、言うたやんな?」 ビーちゃん「長引くより、一瞬かなと思って」 フチコ「うちの『さん』、まだ来てへんねん……」 ビーちゃん「でも、きれいに取れましたよ。ほら、お顔もそのまま!」 フチコ「そっちの顔やなくて、こっちの顔見てぇな……」 ビーちゃん「あ。涙目ですね」 フチコ「ヒリヒリすんねん……。あ、あ……?」 ビーちゃん「フチコさん?」 フチコ「なんや、これ。さっきより、腫れてきてへん?」 [ぽわんっ] ビーちゃん「……あら」 フチコ「『あら』て、なんや」 ビーちゃん「フチコさん、お胸が腫れて……ミルク・ホルスタインさんになってますよ」 フチコ「なんや今度は、ホルスタインさんやん」 ビーちゃん「ステッカー一枚で、こんなことに……」 フチコ「うちもこんなことになるとは思わへんわ……。ビーちゃん、服。はよ服」 ビーちゃん「さっき用意したサイズで入りますかね?」 フチコ「ほな、大きいの持ってきてぇな!」 ビーちゃん「大判なら、まだあります!」 フチコ「ステッカーから離れてぇな!」