Song Cover Image

多くを望むな

V5.5

透明なショーケースの中 「これ以上 望まないでください」 貼り紙みたいな記憶が まだ 心臓に剥がれず残ってる 増やした願いの数だけ 世界は 静かに壊れていった 大切なものほど 両手から 先に消える だから僕は 欲しいものに名前を付けない 愛も 未来も 期待も 失った時に ちゃんと傷つけるように 「これくらいで幸せです」 上手に言えるようになった頃 本音だけが 薄暗い部屋で まだ子供みたいに泣いていた 全部ほしいと思った夜から 僕は 何かを怖がるようになった 光を増やすたび 影まで濃くなるなら 最初から 暗いままでよかったのに 「足りない」って感情だけが 今日も 生きる理由みたいに脈を打つ ショッピングモールみたいな幸福 並べられた理想の顔 選ばなかった未来たちが ガラス越しに笑ってる 羨望は毒だって 誰かが言ってたけど 本当に怖いのは 「欲しい」と認めることだった ねえ もし全部を手に入れたら 僕はちゃんと 空っぽになれるのかな 失う前提でしか 愛せなくなった心が 優しさの形をして 静かに腐っていく 「多くを望むな」 その呪いだけ綺麗に育ってしまった だから夢を見る時も どこか逃げ道を残してしまう 壊れないように 減らないように 期待しないように そうやって守った心には もう 何も飾れなかった 幸福の最大容量を 勝手に決めてしまった夜から 僕はずっと 手を伸ばすふりだけ上手くなった