
自動全否定の果て即ち伽藍のアポリア
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V5.5
冷え切る体温は 部屋の湿に融けて 心拍のみがただ 生存を擬している 硝子の双眸に 朝光は届かず 私は肉体という伽藍で死んでいる 誰もが自らの 神を盾に構え 異端の正しさを 悪と撃ち落とす 街を埋め尽くした 聖戦の狂騒が 私の無菌室の 虚無を侵食する 全員が正しいと 叫び狂う世界なら 一体誰が正しいと 誰が断じえよう 一億の正義が 導いた帰結は 誰も正しくないという自動全否定 雑踏のなかで 完璧な仮面を編む 心が死んだからこそ 綺麗に微笑える 生きる便宜のために 感情を殺した 死せる心では 生の肌に触れられない 世界が正しさの 弾丸を放つように 私の脳内でも 矛と盾が爆ぜる 歩まんと欲する足 諦詛という刃 相容れぬままに 思考を凍結する 全員が正しいと 祈り狂う世界なら その祈りの数だけ 命が翻る 全ての伽藍が 音を立て崩れ去り 解のないアポリアに 私は立ち尽くす 生と死の境界が 昏く滲んでいく 私は生きたいのか 死に急ぐだけなのか どちらの願いをも 正と脳が告げて どちらの私も 許されず引き裂かれ 全員が正しいと 叫び狂う世界なら 誰も正しくはないと 歌う他ないだろう 呼吸を反芻する 完璧な戦死者として 矛盾の檻のなか 私はまだ生きている


