空へほどける 雨を見ていた 濡れない街に ひとり立って すれ違う人は 後ろ向き 誰も僕を 見ないまま 止まった時計を 進めても 針は僕の指を 避けてゆく 追いかけるほど 遠ざかる 今日が昨日へ 沈んでゆく 前へ 前へ 歩いているのに 街は静かに 昨日へ沈む 消したはずの足跡ばかりが 僕の行く先を 知っている 逆さに降る この雨の中 僕だけが 帰れない 閉じた窓には 知らない部屋 枯れた花びら 蕾に戻る 戻せるものが あるのなら 戻してはいけないものもある 忘れることを 赦すほど 名前だけが 鮮やかになる 消えたはずの その声が 夜の奥から 僕を呼ぶ 前へ 前へ 歩いているのに 朝はいつでも 背中を向ける 失くしたものを 探すたび 見つかるのは 僕の影 逆さに降る この雨だけが 僕の涙を 知っている ある日 気づいた 戻っているのは 時計じゃない 街でも 雨でもない 僕が何度も 同じ場所から 動けなくなっていただけ 前へ 前へ 歩いてみようと 初めて背中を 街へ向けた すると世界は 何も言わず ゆっくり正しい 雨を降らせた それでも足元に 残っていた 僕の知らない ひとつの足跡 振り返れば そこには 昨日の僕が 立っていた 「行かないで」と 言えなかった僕が ずっと僕を 待っていた 空から落ちてくる 雨の中 僕は初めて 濡れていた