紅い紋様 遠い昔、一人の青年がいた。 彼には、命よりも大切な人がいた。 けれど、その人を守ることはできなかった。 その日、彼は誓う。 「もう二度と、大切な人を失わない。」 その想いは、やがて彼を人ならざる力へと導く。 彼は強さを求めた。 誰よりも。 何度倒れても立ち上がり、 戦い続け、 さらに強くなることだけを願った。 しかし、力を得るたびに、 彼は少しずつ忘れていく。 何のために強くなったのか。 誰を守りたかったのか。 何を失ったのか。 その記憶は、紅い紋様となって心の奥深くへ刻まれていった。 長い時が流れた。 戦争も争いも遠い記憶となった時代。 一人の少女が生まれる。 彼女の腕には、不思議な紅い紋様が浮かんでいた。 理由はわからない。 それでも、ときどき見る夢があった。 見たこともない景色。 見知らぬ青年。 そして、胸が締めつけられるような悲しさ。 ある日、少女はすべてを思い出す。 それは自分の記憶ではない。 遠い昔、一人の青年が未来へ託した願いだった。 彼は強くなりたかったわけじゃない。 ただ、大切な人を守りたかった。 その願いだけが、 時を越えて彼女へ届いていた。 少女は、静かに微笑む。 涙を流しながら、 そっと紋様に触れる。 そして、優しく語りかける。 「もういいの。」 「もう、いいの。」 「あなたが守りたかった未来に、私は生まれた。」 「だから、もう戦わなくていい。」 「あなたのおかげで、私はこうして平和な世界に生まれることができた。」 でも…何か胸騒ぎがする。 何かが、始まろうとしている――。

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