
羯諦 羯諦 最初から意味なんてないなら! どうしてこんなに苦しいんだよ!! ……あぁ、そうか。 僕が、勝手に意味を背負い込んでただけか……。 世界はただ、そこにある 雨は落ち、石は転がる 人は生まれ、いつか還る そこに 「悲劇」と記すのも 「美しい」と綴るのも 世界ではない 僕だ 昨日まで 手放せなかったものが 今日 ふと軽く思える ものが変わったわけじゃない 僕の眼差しが変わったんだ 空即是色 色即是空 世界という白紙に 最初から意味などない 意味を読むのも 意味を与えるのも 僕だ だから この悲しみも この喜びも 僕が握りしめている間だけ 僕のものになる 「失敗」と書いた紙切れを 僕は何度季節が巡っても 捨てられなかった でも 紙はただの紙だった 重かったのは 過去の事実ではなく そこに刻んだ 僕の執着だった 過去の事実は もう変えられない でも 過去につけた名前なら 今からでも書き換えられる 「あれは過ちだった」 そう嘆いていた僕が 「あれも僕の一部だった」 と受け入れる日が来る 空即是色 色即是空 喪失を 数え上げるたび 僕は 「ない」という影を 自ら色濃くしていた あるものには「ある」と ないものには「ない」と ただ、それだけでいい 余計な一行を 僕が足すから 世界は 重く、息苦しくなる 救いを求めて 空を見上げる けれど 空は何も語らない 世界は 僕を救済しようとも 絶望させようとも していない ただ、静かに そこにあるだけ 意味を持たない、ただの出来事に。 自分都合の、素敵な意味を。 不思議なほどに、嬉しい気持ちが 静かに胸を、満たしていく。 僕のレンズを、使いこなそう。 それこそが真の……休息していく。 空即是色 色即是空 意味がないから 虚無なのではない 意味がないからこそ 僕は 自由に意味を描ける 悲しみに暮れることも 喜びに震えることも 世界から課された 運命じゃない 僕が選び取った ひとつの見方だ 苦しみにつけた名札を 一度、そっと外してみる それだけで 同じ景色が ほんの少し、違って見える 雨は雨 石は石 僕は僕 羯諦 羯諦 今日というまっさらな一日に 一番素敵な意味を、そっと置く 優しい言葉が僕を作る。

