
雪原を銀狼が駆ける 一陣の風となって 闇夜に浮かぶ双眸は 不可避の弾丸 狩るものと狩られるもの 自然の摂理の外で 己の命より重い 護るべき絆の為 脳裏に過ぎる幼い頃 庇護なくして明日はなく 抱き上げられた温もりが 今もこの鼓動に宿っている 鳴り響く鐘の音 襲撃を告げる 記憶を辿り 臭いを辿り 地を這う矢になって 凍てつく空気に 焦燥を預け ただ誰が為に 宵闇に線を引く 雪原を銀狼が駆ける "アナモタズがでた"と 縄張りを巡る争いで 友は帰らなかった 山河を覆う吹雪の夜 遠吠えが沈黙を破る "ヤツがヤマをおりた"と "ヒトをかりにいった"と 四肢が伸びきる頃には その姿は畏怖の目に晒され あのヒトは目から水を流し ワタシを山へ逃した もうここには戻れない それだけはわかった 野生に目覚め 獲物を喰らい それでも揺るがぬもの この命の意味を この牙に懸けて ただ誰が為に 厄災を祓う 忘れもしないあの声が 悲鳴に変わるその刹那 閃く銀の立髪が 飢えた悪魔に飛びかかる 鋭く深くアギトは 喉笛を貫く 振り回され 掻き毟られ 鮮血に塗れても 目の端に映る "ブジでよかった" ただ誰が為に この身を奮う 硝煙の匂いとともに 音が消える世界 静かに崩れ 這いずりながら あのヒトの元へ 引き鉄が引かれ 翻る天地 ただ誰が為に 銀は紅く染まる あの日と同じ 温もりに抱かれ 眠る

