Song Cover Image

解説書

V6

[Intro - Needle drop, vinyl surface noise, a single low sustained string note, no piano yet] [Verse 1 - Half spoken, plain, close to the mic] 父が 箱を抱えて帰ってきた 中身より 箱の大きさを覚えている 母は 値段を言わなかった その月の家計簿のことは 何も知らなかった [Verse 2 - Same hush, a little brighter, the child's voice] レコードに一枚 紙が挟んであった 第一楽章 嵐 第二楽章 主人公の回想 それを読みながら 針を落とす 音が 言葉のとおりに鳴った そういうことだったのか、と思った [Verse 3 - Piano enters softly, voice stays low] 何度も読んで 折り目が白くなった 第三楽章のところだけ 破れかけて 電気代の話をしていた夜も 隣の部屋で 交響曲が鳴っていた たぶん 二人には うるさかった [Build - Strings begin to move, tempo pushing forward, voice rising line by line] それから何十年 プレーヤーは 押し入れの奥 紙は どこへ行ったのか わからない けれど 読み方だけが 残った ここは嵐 ここで感情が変わる ここで 最初の主題が 戻ってくる [Break - One beat of silence] [Chorus - Full arrangement, the voice opens fully, long sustained notes] いま 画面に 波形が並んでいる 真夜中の部屋 小さな三音 無音 決壊 そう書くと そのとおりに鳴る 解説シートを 今は 自分が書いている 針を落とすかわりに 再生を 押す あの箱の値段を いまなら 想像できる あの頃の二人には 安くなかったことも そういうことだったのか [Post-Chorus - Everything cuts off, piano reverberation only, voice back to a whisper] 何も知らずに 聴いていた 知らなくていいように してくれていた [Verse 4 - Single piano notes, half spoken] 曲が始まると 父は しばらくこちらを見ていた 母は 何も言わず 隣の部屋へ戻った あのときは 音しか聴いていなかった [Outro - Piano alone, vinyl noise returns underneath] 最後の楽章の解説は いつも短い [End - The needle lifts, surface noise, silence]