
午前三時すぎ 鍵を回して 靴を脱ぐ場所も散らかってる 昨日のシャツとコンビニの袋 郵便受けには電気代 冷蔵庫を開けてみたけど 麦茶とマヨネーズしかない 腹が減ったな まあいいか 財布の中には六百円 六畳じゃ狭いと思って 八畳借りたはずなのに 機材を置いたら 同じだった 八畳一間の真ん中で 今日もギターを鳴らしてる 壁の向こうに怒られないよう 少しだけボリュームを下げて 何にもないって笑うけど 一本だけは手放せない この部屋で一番高いもの 抱えて朝まで起きている 家賃は三日遅れてる 弦なら昨日替えたばかり 優先順位がおかしいって 自分でもちゃんとわかってる バイトのシフト表の横 ライブのフライヤー貼ってある 客が九人だった夜の 半券だけは捨てられない いつまでこんなこと やってんだろうって 考え始めたら コードを鳴らす 八畳一間の真ん中で 誰も知らない歌を歌う 窓の向こうが白むころに やっとひとつサビができた 何にもないって笑うけど これだけあれば悪くない 名前もついてないこの歌を 明日あいつらに聴かせよう 壁には傷 床にはシールド 机の上には 払ってない紙 それでも隅には ケースにも入れず あのギターが 立っている これでいい 八畳一間の真ん中で 今日もギターを鳴らしてる でかい夢なんか言わなくても 今夜はこれで十分だ 何にもないこの部屋から 誰かに届けばそれでいい 朝の光が差し込むまで もう一回だけ もう一回だけ ©️ytsgax

