雨が窓を 濡らす夜 6畳の部屋 チャイムの音 紺のネクタイ ゆるめながら 煙草に火をつけ 黙るひと 辛口の酒を ふたつ注げば 今夜 貴方といれるのね グラスを持った 左手の 薬指だけ 白すぎる 赤いグロスを 拭わないで 首筋にひとつ 残してよ 帰る場所など 訊かないけれど そんなに綺麗に 消さないで 辛口の酒が 喉を焼く 貴方の嘘より やさしいわ 嫌いと言うほど 欲しくなる 今夜も名前のない女 近づく吐息に 目を閉じて 紺のネクタイ 締め直す 「また来るよ」なんて 言わないで 待ってしまうから 言わないで 赤いグロスを 拭わないで わたしの色を 連れてって 薬指には 白い跡 首筋くらいは わたしのもの 雨の向こうへ 光が消える 辛口の酒を もう一杯 赤いグロスを 塗り直す 誰に見せるでも ないくせに 薬指には 白い跡


