
机の隅を片づけたら 青いライターが出てきた コンビニで買った百円の どこにでもあるやつ たぶん去年の十一月 終電なくして来た夜に 窓を開けて寒いって 笑って置いてった 返すほどのものじゃないし 捨てるほどでもないから 今日までずっと そこにいた 百円ライター 火をつけたら あの夜の匂いがした 好きだったなんて言えないまま 季節だけ変わっていった 百円ライター もう君には 必要ないものだろうけど 僕にはまだ捨てられない たった百円なのに 連絡先は残ってるけど もう開くこともなくなった たまに流れてくる写真で 元気そうだと知るくらい 「今度ライブ行くよ」って 結局一度も来なかった その「今度」が来ないこと 途中からわかってた 何かが始まったわけでも 終わったわけでもないから 思い出なんて 呼べもしない 百円ライター 火をつけたら 横顔だけ浮かんできた 言えば何か変わったのかな 今さら考えてしまう 百円ライター 使い切れば 捨てられると思ってた ガスがなくなったそのあとも 引き出しに戻していた 君が忘れたものなのか 僕が残したかったのか もう わからないけど あの日からずっと ここにある 火はつかない 百円ライター 火はつかない それでも捨てられなくて 好きだったなんて言えないまま 今日まで持ってきた 百円ライター 百円なのに ずいぶん高くついたな 笑って引き出し閉めたけど たぶん明日もそこにある ©️ytsgax

