
話の続きをしようか 怖いの 平気なんだっけ 助手席の君が そう聞いた もちろん 平気だよ 俺は 声を低くした 本当は 心霊スポットなんて 好きじゃない でも 君と二人きりに なれるなら 少しくらい 怖い方がいいと 思っていた 怖かったら 俺の袖 つかんでいいよ そう言った 俺の手が 先に 震えていた 山道を 抜けた先に ホテルの 廃墟があった 昔 そこで何か あったらしい 君は 懐中電灯を まっすぐ 奥へ向けた ここ そんなに怖いですか そう言って 少し笑った 俺は 後ろを 振り向けなかった 吊り橋効果なんて なかった 揺れていたのは 俺の膝だけだった 失敗した 完全に 失敗した 君との距離は 縮まらない でも 帰り道だけは まだ 終わっていないと 思っていた 帰り道 車の中 さっきのホテル 怖かった? 俺が聞くと 少しだけ 返事があった ごめん 無理に連れてきたかな ううん 連れ出してくれて 嬉しかった 俺は ハンドルを 握り直した 外 久しぶりだから そう 聞こえた 山道は 暗い でも 不思議と 会話は続いた 俺 正直 ちょっとビビってた 知ってる 手 震えてたから でも 逃げなかったね そういうところ 嫌いじゃないよ 胸の奥で 何かが跳ねた 赤信号で 車を止めた 隣を見る 君は 眠っていた 静かに 息をしていた じゃあ さっきから 俺に返事を しているのは 誰だ 背中の後ろで シートが軋んだ ルームミラーを 見る 後部座席に 赤い服の女が 座っていた 怖かった? さっきと 同じ声だった 女は 少し笑った 怖くないわけ ないよね 死んでるんだもの ルームミラー越しに 目が合いそうになって 女は すっと 目を伏せた もう一度 ミラーを見る また 目を逸らした 怖いはずなのに その仕草が 少しだけ 可愛く見えた あのホテルに いたの? うん ずっと 女は 窓の外を見た 外は ずいぶん 変わったんだね その声が 寂しそうで 俺は 何も言えなくなった 赤い服 似合ってるね そう言うと 女は ミラーの中で 瞳を揺らした そういうこと 言われたの 久しぶり その仕草に 心臓が高鳴った これが 霊障ってやつかな 三人で 山道を下った 君の家の前 車を止めると 助手席の君が 目を覚ました 今日は ありがとうございました でも もう二度と 誘わないでください ドアが 閉まる まあ そうなるよな 俺は 少しだけ 笑った ルームミラーの中 赤い服の彼女が 目を伏せていた ねえ さっきの話 途中だったよね 俺は エンジンをかけた さて これからどこ行く? あなたと一緒なら どこでも 俺は 息を吐いた 邪魔者は いなくなったし 話の続きを しようか 夜は長い 前 来れば? うん 吊り橋効果なんて なかった でも あの夜 俺はその吊り橋で 出会ってしまった 最愛の人に

