3号掘削機 作業音がうるさく 聞き洩らした終業の合図 主任のボヴァに肩を叩かれ ようやく手に持った機具を放った バイザーの表面を厚く覆う オイルとメタンのしずく 右手で拭う 慣れない 分厚いグローブ 甲の圧迫 アースタイムでちょうど3ヵ月 For humanity 謳うアナウンス 開拓民として降りた階段 相反した思惑で選んでいた 耐圧スーツ越しに見たモニター 180度 もちろんマイナス 「アイアム…」で始まる上っ面な挨拶 指先かじかむ それでも自由を味わう 極寒のタイタン ここが俺のザイオン 寒さと重低音(ベース)に震える夜 吹き付けるメタンの嵐を越えて 自分の足で立ち 吐き出すBreath 捨ててきた故郷じゃ見えない光 身体は悲鳴をあげていても 心で繰り返す ここならきっと 壁の白さに慣れない片目をこすり 届く配給トレーが横滑り 合成スープこぼれ「ったく」 舌打ち 隣りの卓は四人の男たち その エピソードならすでに聞いた またイキった話 壊れたレコード針 馬鹿馬鹿しい でも耳を澄まし 『地球での武勇伝』… 今日も繰り返し 翌日もルーティン 軋む関節 鈍く重く 向かう300メートル先 作業区画 待ち受ける氷塊層 緑内障の左目もバイザー補正で超解像 表面に打つスクレーパー 隙間を覗けば 変化する感触 点火 赤褐色 研磨し圧送 ポンプ展開上昇 ぐらり たちくらみ いつもの症状 極寒のタイタン こここそがザイオン 寒さと重低音(ベース)に震えを殺す夜 どんな理由でこの地獄にきたんだ 麻痺した左手見て言われるphrase 捨ててきた故郷に残した秘密 身体が悲鳴をあげていても 間違ってない ここならきっと 人体は案外柔らかい 氷塊を叩くたび浮かぶ脳内 あの日 俺が振った鉄塊が 破壊したのは ある男の松果体 つまらない金勘定 見下しの表情 奴の家族は呼んだ 亡霊のような妙な女 名前だけ一方的に尋ね 髪の毛一本くすねてった 極寒のタイタン ここが俺のザイオン 寒さと重低音(ベース)で痺れる半身 吹き付けるメタンの嵐を越えて 自分の足で立ち 吐き出すBreath 捨ててきた地球から 見えない星で 身体は悲鳴をあげていても 心で繰り返す ここならきっと 始まりはまず片方の視界 次に左手に広がった カルテに書かれた文字は「原因不明」 あるとき見つけた タイタン行きの公募 志願に必要なのは名前だけだった 呪いはどこまで届くのか 俺は逃げ切った 逃げ切った そうだろ


