
刻む時の音 白い回廊 あなたの影 月のひかりが 薄布を透かして 名もない花が 水面に沈む 古い鏡のなか 振り向いたあなた その輪郭だけ 今も消えない ひとつずつ 色を失くして 指のあいだから 零れていく 記憶は 砂のよう 掬いあげても 残らない 花も 光も 約束も 確かなものは 何ひとつなくて それでも あなたを想う 閉ざされた温室 砕けた硝子に 夕暮れが滲む 書きかけの手紙は もう読めなくて 遠い星だけが 静かに瞬いていた 名前が 砕けて 光に 埋もれ 世界が 崩れても なお 世界の最果てから あなたを歌う 空が消えても 星が消えても この声が 時間に埋もれても それでもなお あなたを 歌う 最後の光が 指の隙間から 零れていくまで 刻む時の音 白い回廊 あなたの影 そして 今は 何もなくとも

