まだ 光もなかった まだ 名前もなかった 静けささえ 静けさと 呼べぬほどの 無の縁で 私はただ 見ていた 始まりさえ 持たぬものを 終わりもなく 見ていた ふいに 揺れた 何もないはずの その奥で 音もなく 罅でもなく けれど 確かに ずれたもの それは 小さな 小さな熱 壊れそうで もう戻れない 最初の 鼓動 やがて 開く 無の真ん中を 裂くように 光走り 闇はほどけ 星の種が 撒き散らされる 一つの 揺らぎが 世界を 変えてゆく ないままでは いられなくなる それが 生まれるということ ああ 宇宙が 開くように 恋もまた 目を覚ます 名もない熱が 胸の中 そっと そっと 光り出す ああ 星が 生まれるように 心にも 夜が咲く 誰かが 誰かを見つけた時 暗闇に 銀河ができる 長い 時を越え 小さな星に 命が咲く 空を見上げ 声を覚え 誰かの温もりを 知る者たち 丘の上で 二人がただ 星を見ていた その夜に 何気ない 一言だけが もう一つの 無を揺らした 指もまだ 触れていない 約束さえ ないままで それでも 確かに そこに生まれた 名前のない 秘密の熱 見えない 力が 二人を 引いてゆく 近づくほど 遠くなるのに 心だけ 先に巡る ああ 宇宙が 開くように 恋もまた 目を覚ます 瞳の奥に 残る人 それだけで 世界が変わる ああ 星が 巡るように 言葉にも 軌道がある 誰かを 想うそのたびに 暗闇に 星座ができる 恋は 爆発じゃなくていい 始めは 微かな 揺らぎでいい いない時間が その人を いっそう 強く 描くなら 愛は きらめきだけじゃない 燃え続ける 星のように 弱さも 痛みも 抱えたまま 隣を 照らし続けること 消えてゆく 星を見た 別れてゆく 人を見た それでも 残る 温もりが 次の光へ 変わってゆく ああ 宇宙が 生まれたのは この瞬間の ためだろうか 孤独だった 心たちが 引き合って 夜空になる ああ 星が 燃え続けるように 愛もまた 生きてゆく 触れて ほどけて 失っても 光だけは 渡り続ける ああ 私は 見ているだけ なのに 胸が 揺れている 最初の一滴みたいな 名前のない この熱を どうかまた 揺らぎが 生まれますように どうかまた 暗闇に 光が射すように 誰かの胸に 誰かという 新しい 宇宙が 生まれるように