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あくまでも仮説。

V6

公道をなぞる 光の偏角 地軸は黙って 影を傾ける 昨日と同じ 緯度に立って 昨日とは違う 夕暮れを見る 近日点も 遠日点も この手のひらじゃ わからないけど 窓から差し込む 光の角度が 夏の居場所を 少しずつ消した 一周すれば 帰れるなんて 誰が決めたんだろう 太陽さえも どこかへ向かってるなら 「元の場所」なんて なかったのかもしれない 巡って 巡って 春はまた春の顔をして 燃えて ほどけて 夏はまた夏を名乗って 同じ空だと 僕らは笑うけれど ほんとうは一度も 同じ場所じゃない それでも暦は 知らないふりで 次のページを めくってゆく 八分ほど前の 太陽を見て 僕らはそれを「今」と呼んでいる 遠い 恒星の 古い光まで 今日の夜空に 並べてしまう 太陽系ごと 銀河を巡り その銀河さえ 静止しないなら 一年かけて 戻ったここは 去年のどこへ 続いてるんだろう 巡って 巡って 反復に似た 不可逆を 重ねて 重ねて 僕らは今日まで来た 春という 座標 夏という 残像 秋という名前を 風に与えて 僕らも全部も 移動している 中心も 静止も 見る場所ひとつで 変わるのなら 戻るも 離れるも 僕らがつけた 名前なのかもしれない 星は巡る 太陽も巡る その上で僕らは 止まっているつもりで 隣に立っている 巡って 巡って 遥かな軌道の向こうへ 季節を連れて 僕らは運ばれてゆく 昨日の宇宙は もうどこにもなくて 明日の宇宙は まだ名前すらない それでも春には 花がひらいて 夏には長い 陽が残って 秋には影が 僕らを追い越し 冬には空が 少し遠くなる 何億年もの 運動の途中 二度とは戻れない この場所で 今 僕と君が ここにいる …… まあ あくまでも 仮説だけどな こんなこと言って あれなんだけどさ 「季節、変わったよね」 『そうだね』 …… 帰ろうか