久方の空 霞みゆく 名もなき風に袖は揺れ 言葉ひとつ残せぬまま 春は静かに過ぎゆけり 振り返れば面影は 淡き月影のその中に 触れむとすれば指先を すり抜けて消えゆきぬ また逢はむ その一言を 胸に秘めたるまま 天つ風は吹きゆきて 季節ばかりが遠ざかる さらば さらば うたかたの日々よ 泡沫の夢よ 君を想へば今もなお この胸は痛みけり かへらぬ人と知りながら 忘るることも叶はねば ただ月影に名を呼びて 夜の彼方を見上ぐる 暁近き窓辺には 白き光の降り積もり 言問はぬまま終はりたる 物語だけ残りけり 幾千の時流るとも 褪せぬ面影抱きながら 夢路の果てを辿るごと 独り歩みを続けゆく 花は散りゆき 風は止み 残るは静寂ばかりなり されど確かに此処にゐた その温もりを忘れじ さらば さらば 愛しき日々よ うたかたの夢よ また逢はむと願へども 声は空へと溶けゆく かへらぬ人となりし君 それでもなお想ひけり 月影ひとつ揺れるたび 君の面影咲きにけり さらば さらば 久方の空の彼方へ また逢はむ その日まで