ダメ男辞典を開く 指で折った付箋が増えていく 最終電車 ホームの風 LINEは既読 返事は「後で話そ」 舌の先に残る微量のスパーク もう一回だけ 初日は奢る 次は割り勘 その次は財布忘れた タクシー代 立て替えたレシート未清算 香水が強い夜 帰りは既読スルー ストーリーは更新 私のDMは灰色のまま 「夢がある」って言うたび 住所は転々 郵便は親の家 手帳は真っ白 でも口だけ多忙スケジュール 通知が点滅する度 胸に小さな電気が走る 指先は学習済みの動作 もう一回だけ 頭では赤信号 胸では青信号 打ち込む「着いた?」の四文字 分かってるのに 分かりたくない ドーパミンが先に走る No no また引っかかる 領収書だけ現実が残る PayPayの履歴が恋の跡 Stopと言いながら Call again Red flag が風に鳴る部屋で 正しさより触れるぬくもり ダメだと知りつつ まだ好きって何 終わらせたいのに もう一回だけ I know better 心拍が先に行く I know better 親指が送信を押す just one more もう一回だけ 土曜の朝 モーニング 連絡なし 既読は 「寝てた ごめん」 午後から会う?で支度をやり直す 合鍵は返さず 置きっぱなしの充電器 玄関に残る知らない靴跡 サブスクは共有 支払いは私名義 「振込遅れててさ」 その台詞はテンプレ 空ポケットを撫でる手が覚える もう一回だけ 直すから 信じて と言うだけのアップデート バージョンは上がるのに バグは居座る 消せないスレッドをスクロールする指 幻振動がまた鳴る もう一回だけ もう一回だけ やめたいのに もう一回だけ just one more just one more やめたいのに もう一回だけ No no また引っかかる 家計簿アプリが真実をつく 未回収の「あとで」が増える Stopと言いながら Ring again Red flag をたたむみたいに 見ないふりして灯りを消す ダメだと知りつつ まだ好きって何 終わらせたいのに もう一回だけ 友だちの忠告は既読のまま 母のため息を電話越しに飲み込む 鏡の前で口紅を引き直す 今日は最後と言い聞かせる 脳内に小さく降る砂糖の雨 舌の裏で溶けていく Stop go stop go 心拍は正直 Read me read me 私を守りたい でも親指はホームボタンへ もう一回だけ No no それでも選んだ 手の温度がルールを塗り替える 正しさより今夜の「大丈夫」 Stopと書いて Kiss again Red flag は洗濯かごの下 泣き笑いの顔で鍵を閉める ダメだと知りつつ まだ好きって何 終わらせないで もう一回だけ 辞典を閉じる音 通知は静かに点滅している 明日はうまく愛せますように アラームを二つ もう一回だけ



