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『死神(Shinigami)』

闇夜に独り 行く宛もなく 濡れし路地裏 膝を抱え 己が命を 恨みけり 「死にてしまわば 楽にならん」 その呟き 風に溶け 誰もおらぬはずの背後より 冷たき気配 忍び寄り 死神はただ 静かに笑みぬ 足元に落つる 影ひとつ 「未だ火は 消えざるぞ」と 見えぬ手 そっと触れ 運命の糸を 撫でゆきぬ 生と死の境にて 男はただ 息を飲みけり 人の命の 生末を 見抜く術を 授かりて 貧しき男は 医者となり 救いの名にて 金を積む 助けし命の 数のみを 己が価値と 信じ込み 夜を忘れて 働き続け いつしか心は 乾き果てぬ 「さらに欲し 未だ足らぬ」 救いの果てに 欲は咲き 死すべき者を 救わんと 運命さへも 捻じ曲ぐる 死神はただ 見下ろして その愚かさを 愉しみぬ 命の天秤 傾く音 静かに 静かに 響きけり 長き蝋燭 短き蝋燭 揺らぐ火の中 見えしもの 救いか罰か 知れぬまま 男はまた 手を伸ばしぬ 人の命を 弄び 人の灯火 替えし者よ 己が灯火 消ゆる折 何を願えど 還らぬ命 燃えよ 燃えよ 最後の火よ 未だ消ゆるな 消ゆるなかれ 己が命を 握る指 震えて 震えて 止まらざり 無数の火の 並ぶ闇 そのひとつのみ 揺らめきぬ それはかつて 死神が救いし者 それは今にも 消えゆく火 「助け給え」と 叫ぶ声 かつての己と 重なりて 死神は静かに 新たなる蝋燭を差し出し 「これに火を移さば 未だ助からん」と 囁きぬ その火を移さば 未だ生きらる されど我の火は 消えゆく 救いの形は 歪みゆき 命の意味も 崩れゆく 男は震え 手を伸ばし その炎へと 蝋燭を寄せぬ 救いか罪か 知れぬまま ただ一つの 火を見つめけり あと少し あと少し 届きそうで 届かざる 風ひとすぢ 吹き抜けて 運命は 揺らぎ出でぬ 人の命を 弄び 人の灯火 替えし者よ 己が灯火 消ゆる折 何を願えど 還らぬ命 燃えよ 燃えよ 最後の火よ 未だ消ゆるな 消ゆるなかれ 己が命を 握る指 震えて 震えて 止まらざり 震えし手で 蝋燭を 近づけ 近づけ 火を移す あと少し… あと少し… 風ひとすぢ 吹き抜けて 小さき炎 揺らめきぬ ああ…… 火が…… 消える……