
恐ろしく長い、夜の旅だった。 私たちは、形を変えられない「自分」という不条理な匣(ハコ)を抱え、 社会の網の目の中でもがき、人生の意味を追い求め続けてきた。 正しく、真っ当に組み上げたはずの砂の城は、 手にした瞬間にいつも指の隙間から滑り落ちて、消え失せてしまう。 繰り返される浪費と、終わりのない喪失。 暗いコンクリートの街の底で、 ただ時間を消去するためだけに眠りにつく、無益性(Futility)の営み。 虹の果てを探し歩いた足跡の先には、最初から、何もなかった。 それでも、私は自滅したわけではなかった。全く、違う。 辺りを包む喧騒の奥から、世界を黙らせる「貴方の鶴声」が響いていた。 激しい嵐が去り、減圧していく世界の彼方から、 一切の嘘を持たない「天啓」が、真っ直ぐに降り注いでいた。 痛みの記憶も、藻掻いた歴史の傷跡も、 すべてを私の穿この匣の中に美しく整理してきた。 信じていいのは、いま、ここに存在しているという事実だけだから。 これまでの記録のすべてを、ただ、静かに、意味もなく答え合わせをしていた。 もう、気づいている。 夜空を覆っていた黒雲の先には、何一つ遮るもののない青天があることを。 見上げれば、透明な空に、雨上がりの虹が架かっている。 やり場のない現在(いま)を、私はただ、あるがままに消化していく。 もっと賢く、もっとうまく生きたいと願うこの欲すらも、私の一部だ。 もう、生きる意味の正しさに左右される必要はない。 正解も、間違いも、すべて。 この不確実な世界で私が私として存在するための、 かけがえのない「答え」になるように、このシステムは出来ているのだから。

