
冷房の音が途切れた午後 溶けた氷が小さく鳴った カーテン越しに弾ける声を 聞こえないふりで画面をなぞる 真っ白なシャツ 汗まみれの顔 何かに夢中な誰かの今日 「自分には関係ない」と 閉じた窓だけ熱を持っていた 羨ましいと言えたなら 少しは楽になれたのかな 「私だって、さみしい」 その一言が言えなくて ぬるくなったグラスの底へ 本音をそっと沈めていた 陽炎の向こうで誰かが笑う まるで別の国の話 「関係ない」と幕を引いて 本当は少し憧れていた 輝く日々は選ばれた人に 届く季節だと思っていた 強がるたびに胸の奥で 何かが小さく痛んでいた 焼けた歩道を自転車が行く 遠くで合図の笛が鳴った 外した音階 転がるボール 笑いながらまたやり直す声 きれいな場面だけではなく 泥だらけの膝もそこにあった 選ばれたから始めたんじゃない 始めた日々が光っていた 失敗しない人ではなく 諦めなかった人がいた 窓の外へ伸ばした指に 午後の日差しが触れたとき 遠い世界だと思った景色が ほんの少しだけ近くなった 陽炎の向こうで続く笑いは 別の国の話じゃなかった 何も持たずに踏み出した日が 誰かの今日を輝かせていた 眩しい日々は完成された 物語ではなかったんだ 転んだ跡も 外した音も その続きを作っていた 「関係ない」は嘘だった 夢と呼ぶのが怖かった 「無理だ」と言えば傷つかずに ここにいられると思っていた 燃え上がるようなものじゃない 大声で言えるものでもない それでも消えない小さな熱が 胸の片隅に残っていた 閉じたカーテンが揺れている 履かないままの靴がある 始まりの合図を待つように まだ何もない今日がある 陽炎の中で立ち止まる君へ これは別の国の話じゃない 輝く日々は始める前から 輝いているわけじゃない 怖がる君も 強がる君も 置いていかなくていいんだ 消えないほどの小さな熱を ただ離さずに持っていればいい 失敗しても 笑えなくても その一日は君だけのもの まだ何者でもない今日から 新しい景色は作っていける 遠くの誰かを見ていた君へ 今度は君の続きを見せて まだ白いページの真ん中で この先の主役は君なんだ 窓を開ければ風が入る 溶けた氷がもう一度鳴った 熱を残したアスファルトへ 新しい靴音がおりていく

